第7回特定社会保険労務士試験(紛争解決手続代理業務試験)総評
第7回 紛争解決手続代理業務試験 
〔総 評 〕
 
第7回本試験は、大問2題、小問6題のすべて論述形式で、第1問が労働問題について労働者と使用者双方の言い分を読み取りながら解答するもの、第2問は特定社会保険労務士の権限と倫理に関して依頼者からの依頼を受任できるかどうかについて、結論と理由を答える問題で、第1問の小問数が1題減ったことを除けば、過去6回の試験と同様の出題でした。
 第1問・・・
今回は、懲戒解雇に関する問題で、過去6回の出題も、解雇又は雇止め等退職に絡むテーマであったため、対策がとりやすい出題だったといえます。
小問(1)の「求めるあっせんの内容」を記述する問題は、地位確認に関するもので、毎回の出題ですので確実に得点したいところです。ただし、会社が財団法人であり、遅延損害金の利率が5%になる点は、かなり難易度の高い出題だったといえます。
小問(2)及び(3)の具体的主張事実に関する問題は、裁判例などに基づいた懲戒処分の有効要件及び解雇権濫用法理を踏まえながら具体的事項を整理して、使用者及び労働者の双方の立場で、それぞれにとって有利な事情をとりこぼさないように注意して記載していくことがポイントになりました。
小問(4)は、本件紛争の解決に向けて、「法的見通しの考察」及び「解決の方向」について問うもので、過去の裁判例等を踏まえて裁判ではどのように判断されるのかという客観的かつ冷静な分析・予想と、それを踏まえた上での
Xの代理人としての解決の方向を考えさせる問題でした。「考察した法的見通し」と「解決の方向」について、例年は合わせて250字程度で記載させていたものを、今年の出題は、別々に200字で記載させていることから、裁判例等を踏まえた上での実践的な知識や判断力に重点をおいた出題であったといえます。
 第2問・・・
  特定社会保険労務士の権限と倫理に関する問題です。依頼を受けることが「できる」「できない」ということよりも、社会保険労務士法第16条(信用失墜行為の禁止)とその中でも特に厳格に制限された法第22条(業務を行い得ない事件)及びこれらに関する通達の理解、法令間の均衡等の検討過程を記述することに重点をおいた出題は例年どおりです。
 小問(1)は、あっせんが継続中に紛争の相手方から、就業規則の賃金規定の改正についての助言の依頼を受けることができるかどうかについて、本依頼が紛争解決手続代理業務ではないことから社労士法第22条の制限を受けるものではないという点だけにとどまらず、もう一歩踏み込んで、同法第16条を踏まえて言及できるかどうかがポイントになった問題です。過去問を解いておけば比較的容易に解答できたと思います。
 小問(2)は、あっせんがすでに終了し、6カ月程経過後の相手方からの依頼である点やAB社に対しては何らの請求もしない旨を伝えてきたことを法令に照らしてどのように評価していくかを解答していく問題ですが、倫理に関連する判例などを体系だてて整理しておかないと解答しにくい出題です。前年と比較して、文章量は約1割減少していますが、問題の難易度は、第1問はやや易、第2問はやや難でトータルとして平均的な問題でした。以上のことから、合格点は55点(但し第2問は10点以上)、合格率は60%と予想されます。