第4回 紛争手続代理業務試験 総評
第4回 紛争解決手続代理業務試験 〔総評〕

 
 第4回 紛争解決代理業務試験は、過去3回の試験と同様大問2題、小問7題のすべて論述形式で、第1問が労働問題について労働者と会社双方の言い分を読み取りながら解答するもので、第2問は特定社会保険労務士の権限と倫理に関して依頼者からの依頼を受任できるかどうかについて結論と理由を答える問題という従来どおりの出題であり、過去問や当会の予想問題集および直前対策講座で十分に対応できる設問でした。 

 
第1問・・・
雇止めに関する問題は、出題可能性が高く直前対策講座でも取り上げた内容で、論点についても想定の範囲内で比較的容易に解答できるものであったといえます。「求めるあっせんの内容」を記述する問題、労働者および使用者の立場に立って代理人として具体的主張事実を要約させる問題、本件についての妥当な解決方法(解決案)を提案する問題などは、これまでと同様の設問パターンであり、実務能力と法的理解を問うには、適正な判断のできる出題形式で今後もこの出題形式は続くと思われます。

「雇止め」は、これまで多くの判例・裁判例から雇止めに解雇権濫用法理を類推適用すべきかどうかの判断基準が示され判例法理として確立しているところです。また、解雇権濫用法理が類推適用された場合に会社側はどのような抗弁をしていくのか(整理解雇の4要件や懲戒解雇の有効要件、普通解雇の要件など)といったことが論点になっています。
 このように二つの論点を複合させた出題は、第3回(配置転換拒否と解雇の問題)に続き二度目の出題であり、今後もこういった複数の論点を融合させた出題という形での難問化はすすんでいくと思われます。

 また、小問(5)の賃金債権の放棄については、結論は容易に解答できたとしても、賃金全額払いの原則の問題をはらんでいて、判例・裁判例ではどのような判断がなされているのかを答えることは難しかったのではないでしょうか。第1問全体としては、あっせん申請書の書き方と判例法理を理解しておけば、十分に解答できる問題であり標準的な難易度といえます。

 
第2問・・・ 
 特定社会保険労務士の権限と倫理に関する問題です。今回も社会保険労務士法第22条第2項に関する出題ですが、行政通達「社会保険労務士法の一部を改正する法律等の第
2次施行等について(厚生労働省基発第0326009号)」の内容を踏まえていた点で、より具体的で深まった論点からの出題でした。

 また、小問(2)では、あっせん代理業務(紛争解決手続代理業務)の範囲を正確に理解しているかが試され、より実務的な出題に近づいているといえそうです。第2問については、配点30点のうち10点以上の足きりラインがあることから小問(1)を確実に得点したいところです。

 
 総合的にみて、問題は長文化しているものの、出題テーマ(「雇止め」や「社会保険労務士法第22条第2項」について)や論点が事前に予想できたこと、設問パターンは従来どおりで対策がとりやすかったこと、記述量が減ったことなどを踏まえると前回よりもやや易となり、合格点は60点以上、合格率は75%程度になると予想されます。 

特定社労士研究会

 
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