第6回特定社会保険労務士試験 試験問題

 平成22年11月20日(土)に第6回特定社会保険労務士試験(紛争解決手続代理業務試験)が実施されました。

 本試験の問題は以下のとおりです。なお、本試験についての特定社労士研究会の総評は、近日発表の予定です。
 
   第6回 紛争解決手続代理業務試験


第1問
 別紙記載のX及びY社の「言い分」に基づき、以下の(1)から(5)までに答えなさい。
  小問(1) 本件について、Xの主張に基づいて試用期間満了による解雇を争い、特定社会保険労務士としてXを代理して都道府県労働局長にあっせん申請をするとして、当事者間の権利関係を踏まえて記載するとした場合の「求めるあっせんの内容」はどのようになりますか。解答用紙第1欄に箇条書きで記載しなさい。

 小問(2) Y社の代理人として、Y社の行ったXに対する本件試用期間満了による解雇は有効であると主張する場合、その主張を基礎づける具体的事実として重要と思われる事項を、例えば『P専門学校(建設経営コース)修了と学歴を詐称した。』といった要領で簡潔に、かつこの主張以外の具体的主張事実について、5項目を解答用紙第2欄に箇条書きで記載しなさい。

 小問(3) Xの代理人として、Y社の行ったXに対する本件試用期間満了による解雇につき、Y社側が解雇の事由の一つとして『P専門学校(建設経営コース)修了と学歴を詐称した。』と主張した場合、これに対しどのように反論をしますか。その要旨を解答用紙第3欄に250字以内で記載しなさい。

 小問(4) Y社の代理人として、X側が本件について『試用期間について明示がなく、就業規則は渡されていないので、見ていないこと及び中途採用者で課長という地位を特定した採用なので、新入社員の場合ではないため、いずれにしても試用期間の定めの適用がない』と主張した場合、これに対しどのように反論をしますか。その主張の要旨を解答用紙第4欄に200字以内で記載しなさい。

 小問(5) Xの代理人として、本件事案について個別労働関係紛争の解決の促進 に関する法律に基づく「あっせん手続」において、本件紛争の法的見通しを考慮し、それを踏まえ解決を図るとした場合、どのような内容による解決が妥当と考えますか。「考察した見通し」及び「解決の方向」について、解答用紙第5欄に併せて250字以内で記載しなさい。

 第2問  特定社会保険労務士甲は、従業員50名ほどのB株式会社に勤務していAから、B株式会社を生産縮小に伴う配転拒否を理由に解雇されたので、復職を求めてAの代理人として都道府県労働局長に対するあっせん手続を申請して欲しいとの相談を受けた。以下(1)及び(2)のそれぞれの場合について、その結論と理由を200字以内で記載しなさい。

 
 小問(1) 甲の弟がB株式会社の常務取締役の地位に就いている場合、甲はA依頼を受けることができますか。

 
 小問(2) 甲はAから相談を受ける6カ月程前に、商工会議所の無料相談会でB 株式会社から就業規則の残業手当の計算方法の変更についての相談を受け、その場で指導したことがあった場合、甲はAの依頼を受けることができますか。

 
別 紙 1
の言い分〕
 1.私は、平成22年7月1日付をもってY建設株式会社に営業担当課長として雇用されました。

 2.私は、Y社より、入社日の7月1日から3カ月間は試用期間であり、私の試用期間中の勤務状況や入社時の経歴詐称等を理由にY社の従業員としては不適格であるとして、試用期間満了日の同年9月30日付をもって本採用拒否による解雇を通告されました。しかし、私は採用時にY社から、試用期間の明示を受けておらず、また、私は、職務経験者として課長との地位を特定して採用されており、新卒者とは違いますので試用期間の適用は当然ないはずです。

 3.Y社は、就業規則に「新たに採用した者は、3カ月を試用期間とする、試用期間中に従業員として不適格と認めた場合には本採用せず解雇する。」と書いてあるとのことですが、就業規則のつづりはロッカールームの掲示板の横にぶらさげてあるだけで、渡されておらず、私はその内容を見ていません。

 4.採用にあたって、賃金は月額給与とし、基本給32万円、役職手当5万円、営業手当3万円、家族手当1万5000円、通勤費は実費(月額6000円)を通勤手当として支給することと定め、賞与は業績に応じて会社が決定して支給するが、今までの実績としては年間3カ月分以上は出されているということでした。本件賃金の支払いは月末締切で当月20日払いです。

 5.会社は、私が学歴を詐称しているといいますが、そんなことはありません。K大学卒業後に入学したP専門学校の建設経営コースは、途中で就職活動など多忙のため中退しました。しかし、履修科目は若干残っていましたが、専門学校ですから実力が備わればよいので、コース修了と記載しました。損害保険代理店の会社は、R設計事務所退職後雇用保険から給付を受けて  いた平成17年秋頃に友人に誘われ、共同経営者となりましたが、同社の仕事はほとんどしておらず、名目的なものなので、履歴書には書きませんでした。登記簿上は代表取締役となって残っているようですが、これは形式上のことです。
 これらの学歴や経歴のことは、R設計事務所やH建設株式会社でも、従事業務とは直接関係ありませんので、全く問題にはなりませんでした。したがって、これはY社の言いがかりです。

 6.R設計事務所には、アルバイトとして雇用され6カ月後に1年契約の嘱託雇用となり、設計補助を担当しました。しかし、営業や現場監理の業務も応援として時々行っていました。同社では大部分の社員が業務委託的な期間一年の契約による嘱託であり、嘱託といっても正社員と同じなので、職務経歴書には正社員となった旨の記載をしました。その後大手のH建設株式会社に採用されて同社の建築営業部に所属し、営業事務主任となり事務に従事していましたが、時には営業出張も行う一方で、技術課の工事積算事務の手伝いも行い、また、木造建築現場の責任者を毎年数カ所以上は担当していました。現場では「所長」と下請の人などからは呼ばれていましたので、現場所長も経験と職務経歴書には記載しました。
 私は、両社で地方自治体営業の仕事は直接行ってはいませんが、周りの者が担当しており、要領はわかっていましたので、「自治体営業等に経験と能力を生かしたい」と応募理由に記載しました。

 7.入社したY社では、私に地方自治体関係の営業をまかせるといっていたのに、上司のS営業部長と同行営業を行わされました。S営業部長は旧式の人間でとにかく客先に顔を売ることが大事と心得ている人です。現在の公共工事は原則として入札による受注なので、できるだけ細部にわたる工事積算資料を入手することが中心なのでそのことを言いますと「新米のくせに生意気だ。大手のH建設株式会社と当社のような小企業では営業方針が違うのだ!大手企業から小企業の人間に頭を切りかえろ!」と怒鳴られ、私の言うことはとりあげてくれません。某市役所の建設課長との面談中、私はS営業部長 の態度について頭にきて同部長をたしなめたことがありますが、それも営業上の考え方の違いからです。
 このような同部長との同行は苦痛でありパワハラですから私は同行営業を断り、単独営業を主張したのです。私はインターネットで予備知識を得てターゲットを絞って重点的な営業をすべきと考えて資料入手に努めていたのです。また、課長である私の部下は2名いますが、S営業部長と結託して私の言うことは聞かず無視されています。

 8.ところで、私がそんな態度のS営業部長との同行では営業はできないと言って断ったことなど、一連の行為について、試用期間中なのに上司の業務命令を聞かず、上司に反抗的態度をとり、命じた工事積算もせず、パソコンばかり行い、経歴も詐称しているのは社員として不適格だとして、Y社は私を本採用せず試用期間満了をもって解雇したのです。

 9.前述のとおり、私は経歴の詐称などはしていませんし、職務経歴書等は、私の希望や決意も加えて、採用されるための自己PR的に少しオーバーの表現をしましたがこの程度は許されるはずです。私が、Y社の課長として新しい営業方法に切り替えるために種々提言したことをもってY社が業務命令違反というのは不当であり、私の今までのR設計事務所、H建設株式会社における勤務経験を踏みにじるものです。私は、腹立ちまぎれに「こんな会社ではやっていかれない」と言ったことは事実です。欠勤したのはS営業部長などの会社のパワハラにより体調を崩したためです。なお、病院などには行っておりませんので診断書は出しておりません。いずれにしても、私はY社を良くしようと積極的にY社のために発言して行動してきたもので、何も不都合なことはしていません。もし、私の態度が誤解されたのなら改善するつもりであり、試用期間満了を理由に解雇される理由はないと思います。したがって、解雇無効を申し立てて下さい。

別 紙 2
Y社の言い分〕 
1.当社は、土木・建築関係の総合的な業務を行っています。社員は不況により減少して現在は20名程度です。工事は下請や協力会社に発注して行っております。

2.平成22年度から当社では今後の営業方針として市町村などの自治体や第 三セクター等への営業を拡大することを考えており、就職情報誌にこのような営業に適する人の募集広告を出しました。多数の応募者の中から採用選考し、面接の上、Xを7月1日付で3カ月の試用期間をもって採用しました。

3.Xから提出された履歴書の大学卒業後の履歴の記載は、次のとおりです。
  平成12年3月  K大学経済学部卒業 
  平成12年4月  
P専門学校入学(建設経営コース)
  平成14年3月  同校同コース修了
  平成14年4月  R設計事務所入所 
  平成17年9月  同所退職
 
  平成18年4月  
H建設株式会社入社 
  平成22年3月  同社退職
 

4.提出された職務経歴書には、次のとおり記載されていました。
K大経済学部を卒業したが、建設関係の仕事をしたいのでP専門学校の建設経営コースに入学し、同コース修了後、直ちにR設計事務所に入所し、6カ月のアルバイトを経て正社員となり、営業を3年間担当し、現場監理も行った。その経験を活用し、H建設株式会社に入社し、約4年間の営業 担当。現場所長も経験。」
 また、当社応募理由として、「R設計事務所の3年間の営業担当、H建設株式会社の営業4年の勤務経験を生かし、貴社の指向する地方自治体、特に第三セクター等への営業について経験と能力を生かしたいため。なお、工事積算についても精通しているので、入札業務にも力を発揮したい。」と記載。 

5.提出された履歴慮や職務経歴書をもとに面接しましたところ、同書記載の
とおりのことを述べ、R設計事務所は地方の美術館建設や文化財の補修も行い、地方自治体に強いことで有名であり、H建設株式会社も大手で、当社の求める人材にピッタリと考え、営業課長というポストで採用することとしました。

 6.採用後のXの勤務ぶりは、8月中旬までは普通でしたが、その後ことごとく当社の営業のやり方を批判するようになり、上司と感覚があわない、当社のような旧式な営業方針にはついていけないとか、8月下旬には某市の建設課長と面談中、突然同行のS営業部長を「積算資料を貰わないで何のために来たのですか。世間話をしている時代ではないですよ。」と急に怒鳴って相手をびっくりさせ、上司を時代遅れの人間との印象を与え誹謗するという非常識な行動をとりました。それ以降は上司であるS営業部長との同行営業を拒否し、一人で自由に営業をさせてほしいと言いだし、「入社早々なので仕事を 見習え」と注意すると、「自分は課長だ、好きにさせてもらう」と外回りをせず、パソコンばかりにかじりついています。また、工事積算を命じたら資料が不十分だと言って拒否しました。普通ならその範囲で積算できますので強く命じたところ、工事積算は補助的にしか従事しなかったと言い訳をしました。上記のような行動について再三注意しましたが、自分のやり方というものを主張するばかりで改善しません。そして、9月に入り「欠勤する」旨を電話で連絡しただけで、2日連続で欠勤しました。出勤後理由を聞いたら疲れたので休養のためだったということでした。
 また、「こんな会社なんかにいられない」と同僚に言ったりしたそうなので、本当は転職活動のために休んだものと思われます。
 そこで、Xの勤務状況に不信を持ちましたので、当社の社員の中でR設計事務所に友人がいましたので、その人を通じて聞いたところ、次のことが分かりました。R設計事務所では正社員ではなく、最初アルバイトで入り6カ月くらい勤務した後に1年契約の嘱託社員となり、仕事は主に設計の補助で あったこと、営業や現場監理は担当させていなかったこと、R設計事務所で正社員にしなかったのは上司の指示を聞かず独善的な仕事をするためで、3回目の期間満了で打ち切ったこと、K大卒業後入学したP専門学校には、ほとんど出席しておらず、途中で退学し、コースの修了はしていない、とのことです。 
 また、
R設計事務所退職後、友人と損保の代理店の株式会社をつくり代表取締役に就任して、当時R設計事務所にも営業にきたとのことです。そこで登記簿をみますと現在も代表取締役をしており、このことは履歴書に書いていません。兼業について故意に秘匿したとしか思えません。

 7.H建設株式会社に関しても、営業は担当せず内勤で、現場所長などは命じていないとのことでした。 

8.そこで、入社以来のXの勤務態度からみても、また採用上の経歴の重大な詐称や職歴の不実記載をしており、過去の経験と手腕に期待し、課長という地位で採用したのですが、Xにそのような能力はなく、当社従業員としての適格性を欠きますので、本採用はできませんので試用期間満了時の9月末日をもって30日分の解雇予告手当を支払って解雇しました。

 9.当社の就業規則では、「新たに採用した者は、3カ月を試用期間とする。試用期間中に当社従業員として不適格と認めた場合には本採用をせず解雇する。」との規定があり、就業規則は掲示板の横に備えつけて周知しています。従前から中途採用者こそ適格性が大切なので、試用期間は当然適用し、今まで例外はありません。本人も試用期間であることは承知していたと思います。なお、給与はXの言い分のとおりです。

 10.当社のような社員の協調性が第一の小さな会社ではXのような人は会社全体のチームワークに悪影響を及ぼし、到底本採用できませんので、試用期間満了をもって解雇しました。 
                                  以上

合同会社 西日本労務研究センター
特定社労士研究会

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
〜平成22年度 第6回特定社会保険労務士試験 対策教材〜
■「特定社会保険労務士試験 合格予想問題集」(実践演習教材)
■「特定社会保険労務士試験 直前対策講座DVD」(合格解答プロセスの徹底解説教材)

〜社会保険労務士のための 労働紛争解決業務 実務力養成教材〜
■「社会保険労務士のための 労働紛争(ADR)解決業務 実践マニュアルDVD」

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★